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ゼロ・ダーク・サーティ

今回は『ゼロ・ダーク・サーティ』感想です。
本編は新米CIAの女性が特殊部隊を使ってパキスタンビン・ラディンを殺害するまでを描いている映画です。
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2003年、ビンラディンの情報を追跡するCIAイスラマバード支局員。これまでの映画なら家族なり、恋人なりが背景として登場するが、こうした背景の人物はことごとく排除されている。主役のマヤ(ジェシカ・チャステイン)に夫がいるのか恋人がいるのか不明。純粋にCIA職員の顔しか見せていない。分かっているのは高卒の新入りだということぐらい。拷問にかける男性と一緒にいる時もまるでいてもいなくても同じのような立ち居振る舞い。かと言って傍観しているわけでもなく、休憩を取ろうとする男性に逆らうようにストイックに仕事を続けようとする。チャップマン基地自爆テロ事件で同僚女性のジェシカ(ジェニファー・イーリー)を失い、自ら乗った車が銃撃されて危うく命を落としそうになる。さらにオバマ政権に変わり、拷問に関与したことで目下の仕事から距離を置いた方が良いという日和見男性上司にも惑わされない。なぜ彼女がそれだけ執念を燃やすのかさえ分からないほどだが、男性が組織内政治で思考しているのに対し、マヤにはそもそもそんなもの無意味なのだ。ある意味、ビンラディンが片思いの恋人のようにさえ思えて来る。
ただ、“組織内ステルス”マヤを一目で理解したと思えるのはパネッタCIA長官(ジェームズ・ガンドルフィーニ)。「100%確実」とはっきり言うマヤに「あんた誰?」から一気に魅せられて一緒に食事をする仲に。実在のパネッタは現国防長官で、その人の良さそうな雰囲気がよく出ている。
マヤは基本に忠実に地道に追ってビンラディンの連絡役を突き止めたこと。パソコンを駆使するわけでもなく、ただただ地道に予測し、データを突き合わせただけで、自分で派手な立ち回りを演じるわけでもない。
マヤは写真を入手した時、笑い、そして作戦が成功して戦闘部隊のネイビーシールズが帰還した時、そっと涙する。

この映画は「ビンラディンを討ち取った」ことを誇る映画というよりは、「アメリカはビンラディンという『象徴』を討ち取るしかなかった。ところが、実際に討ち取ってみて得たものは……」という、なんというか、ものすごく大きな「空虚」を描いているように感じました。
160分ある映画なんで正直途中で飽きたらどうしようなんて思いましたが、杞憂に終わりました。良い映画でした。