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『リンカーン』

今回は『リンカーン』オススメ映画です。

リンカーン」を見るまではてっきり「奴隷解放宣言」の話だと思っていました。
実際には少し違っていて、この映画は「合衆国憲法修正第十三条」の成立を描くことにより、リンカーンの異なる一面を捉え……そして「リンカーンは黒人差別そのものは否定しなかった」という、今も彼につきまとう批判に、再考を迫るという、なかなかの意欲作になっているのです。

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1865年1月、奴隷解放運動の賛否を巡って起こった
南北戦争が4年目に入り
アメリカでは多くの若者の命が奪われていた。

そんな中、大統領に再選されたエブラハム・リンカーン
自らの夢である奴隷解放を実現するためには
憲法の改正が必要であると考え
「合衆国憲法修正第十三条」を議会で可決することを目指す。

しかし、戦争による疲弊によって
仲間内である共和党の議員のなかでも
南軍と和平し戦争を終結すべきだという声が強くなっていた。

南軍との和平は奴隷解放を諦めるに等しく
リンカーンは思い悩むが
「全ての人間は自由であるべき」
と信じ奴隷解放の意志を貫く。

党が割れて改正法案の可決が困難な状態の中
国務長官ウィリアム・スワードを介し議会工作を進め
敵対する民主党議員の切り崩しにかかる。

また家庭でも、リンカーンは問題を抱えていた。
長男のロバートが正義感から
母親であるメアリー・トッドの反対を押し切り
北軍に入隊してしまう。

すでに二人の息子を失っていた
メアリー・トッドは息子を戦場に送ることに反対し
立場上戦争を推し進める夫・リンカーンを責める。

リンカーンも息子には学生として
安全な人生を歩んでほしいと願っていたが
ただ見守るしかなかった。

そして1月25日、ついに下院議会に第十三条改正案を提出する。

自分の理想のために失われていく命の尊さ
人間の尊厳と戦争終結の狭間で
人類の歴史を変える決断がくだされる。

さすがはスピルバーグ作品です。映画全体の話の進め方自体はうまいし、役者陣の演技にも文句はありません。だけど、その「手堅さ」「堅実さ」ばかりが目立って「映画界にとっての新しい試み」とか「今の視点からの従来になかった古典の再解釈」とか「胸に迫るほどの感情的な揺さぶり」とか、そういった類いのものが、この映画からは感じられません。史実を丁寧に伝えるだけだったら、それこそ学校の歴史の課外授業の教材だったり、それこそさっきも言ったNHK大河ドラマでもできることだし。この映画は、最終的にそういう用途に落ち着きそうな、いかにも優等生的な映画でした。